そのようなわけで、「免疫力」という表現は出来るだけ用いずに進めてゆきたいと思います。
東洋医学の物差しからみれば、カゼを引いて多少発熱があったとしても“表”レベルで邪気の侵入を押しとどめ、このレベルで速やかに排出させることが出来るのであればそのほうが当然ベターです。
感染力が強い場合には感染自体を避けることは難しいかもしれません。ですが、生体への影響を最小限に押しとどめ、できるだけ早い回復ができるように、「正気・衛気」が頑張れるように内部環境を調えておくことが大切です。それにはまず個々に生活習慣の見直しをしていただくことをお願いしたいと思います。
では、どのように調えればよいか?
ご自身で出来ること、ご自身にしか出来ないこととして、
・睡眠不足であれば、睡眠をしっかりとる
・運動不足であれば、運動習慣をとりいれる
・飲食が乱れているのであれば、飲食をととのえる
・職場環境等、冷える状況下にあるのであれば、冷えないように衣服等で冷えないようにする
など・・・世間一般的に「免疫力」をあげましょう、という場合にいわれる内容ですね。(早速用いてしまいましたが(^^;))
東洋医学的な解釈を以下に述べます。(専門用語で説明することをご容赦ください)
・睡眠不足であれば、五臓でいえば腎の臓(西洋医学でいう腎臓とイコールではありません)を傷めやすく、陰陽でいえば陰を損ないやすく陽に傾く
⇒「元気」「真気」が弱り、体液を損ない体内が熱に傾く
・運動不足であれば、五臓でいえば脾の臓(西洋医学でいう脾臓とイコールではありません)を損ない、消化が悪くなり、気血を作りだしにくくなり、さらに、全身の気も停滞しやすくなる
⇒消化吸収が悪くなりエネルギー不足になりがちになり、血行が悪くなる
・飲食が乱れていれば、脾の臓を損ない、上記と同じく消化が悪くなり気血を作り出しにくくなり、かつまた内湿(邪気の一種)をためやすくなる
⇒同様に消化吸収が悪くなりエネルギー不足になりがちにり、かつまた、水分代謝が悪くなる
・身体を冷やしていると、衛気を損ないやすく、気が停滞しやすくなる。とくに下半身からの冷えが長引けば腎を損ないやすくなる
⇒衛気を消耗したり停滞させたりして、衛気が機能を果たさなくなる
⇒「元気」「真気」が弱り、結果、衛気も弱ってしまう
東洋医学の視点での病理変化のパターン例を述べましたが、実際はもっと複雑なものです。
いずれも正気を損ない、体内で邪気を産生し、衛気が働きにくい状況を作りだしてしまうのです。
※外来のウィルスのみが邪気ではなく、体内で代謝されないもの、巡らないもの、も「邪気」の一種、と認識いたします。
「我々の本分」解説 5につづく