「我々の本分」解説 2では、東洋医学の簡単な歴史、「気の医学」であるということ、「正気と邪気」、といったことを簡単に解説いたしました。

「正気」とは何か?

解説2で説明した「真気」「元気」「臓腑の気」「経気」といった生体の正常な運営に関わるものはすべて「正気」といえます。

つまり、生体にとって好ましくない気を「邪気」とした場合、その「邪気」に対抗する相対的概念として「正気」という表現をするのです。

とくに外界からウィルス(邪気)が侵入するにあたっては、生体の浅い部分・体表面に存在する「衛気(えき)」が「正気」として重要な働きをします。(「衛気」の「衛」は防衛の「衛」です。)

この正気としての「衛気」が十分に働いていれば、外界からの軽い邪気であれば生体に侵入させずに済みますし、もしも侵入しても浅い部分(専門用語で“表(ひょう)”といいます。ちなみに深い部分を“裏”といいます。)で邪正闘争をして、“発汗”という現象をもって生体から排除されます。

子どもの頃はカゼを引いて高熱がでても一晩で発汗してケロッと治っていましたよね(体質の強弱によっても異なりますが)。つまり、当時は衛気がしっかり働いているため、カゼをひいても(体内に侵入されても)、“表”レベルで押し止め、発熱して(邪正が闘争して)、“発汗”、という形で邪気を排出していたわけです。

では、オトナになってからはどうでしょうか?意外と「子どものころはよくカゼ引いて熱をだしましたが、大人になってからはカゼをひくことはほとんどないですね。」と云われる方もいらっしゃいます。が、そういった方を東洋医学的に継続して診させて頂いていますと、東洋医学的な物差しでいえば時折、あるいは慢性化的に“カゼを引いている”状態である方もいらっしゃいます。

オトナになってからも、あるいはなってから「カゼを引きやすい」と訴えて来院される方は鍼治療で、「ずいぶんカゼを引かなくなった」あるいは「カゼを引いても軽く済むようになった」と云って頂けることが多いものです。が、先の例の場合、「鍼を受けるようになって主訴(お困りの症状)は良くなったけど、久しぶりにカゼを引きました(=発熱)!」なんてこともあるわけです。(東洋医学的にはちゃんと正気が邪気に向き合って追い出そうとするようになった、わけですが)

さて、この状況を単純に西洋医学でいわれる「免疫力」が向上した、と言ってしまうと恐らく誤解を招くことになるのかもしれません。

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