しばらくでございます。

四診によって陰陽が多面的にみてどのように傾いているのか(=「気」がどのように傾斜、歪んでいるのか)を把握し、それを“和平”に戻すことが鍼灸治療であるし、また、得体の知れない外邪(ウィルスなど外来の邪気)に対する予防にもなり(もちろん程度問題ですが)、感染したとしても重症化を避けることにつながり得る、というようなお話しをして参りました。

いわゆる慢性病で、外邪が影響しない病については「臓腑・経絡」、「気・血・津液」の変調(「気」の傾斜)、といった物差しで対応できることが多いわけですが、今般のように、ウィルスが関わるような“外邪”を中心とした病に対して、東洋医学的に認識し対処しようとする場合には、『内経』や『難経』といった文献の理論だけでは物足りないように感じます。後漢の張仲景による『傷寒論雑病論』はもちろんのこと、明代~清代に興った「温病学(温疫を含む)」の概念を用いないと把握も対処もできないでしょう。とりわけ診断学の面では「舌診」は外せない、といえましょう。

東洋医学を漢方医学、とも言いますが決して“漢の時代で終わった骨董品”ではなく、その後も基本的には患者さんの疾病の多様化に合わせて発展し続けている、ということですね。

東洋医学とは、そもそも中国大陸や日本において正当な医学であり、時代や社会の変遷の中で新たな疾病が発生するなかで、進化・発展しているわけであり、その時々において必要な予防法・治療法を先人の智慧に学び創意工夫して現場にあたるのが重要である、と考えます。

少し話しがそれたかもしれません。

「我々の本分」解説 6 につづく