玄珠堂のスタッフ、クリスです。

「秋分を過ぎて、立冬が近づいてきました」

最近は、気温低下に伴い、冷えを感受することで“寒”による病症の方もいらっしゃいますが、逆に歯の炎症や膿漏、蕁麻疹や鼻づまりなどのアレルギー反応、東洋医学的に“熱”性の症状を訴えている方が多くみられるようになりました。

院長から「体の中に熱がこもっている」という説明を耳にしたことがある方も少なくはないと思います。

“熱”とは上に燃え上がるため、体内に熱がこもると、お肌やお体の上部に症状として現れてくるのは、なんとか、想像がつく思いますが、

実際にどのようなことなのでしょうか?

そして、秋になっても、どんな対処法が相応しいでしょうか?

まず、内熱のメカニズムとその影響をなるべく簡単に説明します。

《内熱とは何か、その関係性》

我々は、陰気と陽気によって生かされています。それらの気が身体を出入りし、上昇・下降することで、自然界の変化に適応し、体内のバランスを取れています。即ち、健やかに過ごせることができています。

・陽気=太陽・熱 (夏季に極む)

・陰気=水・寒 (冬に極む)

陽気は、自然界(大宇宙)と我々の体内(小宇宙)の太陽のようなもので、体を温めて、食物の消化吸収に働いてくれています。また、消化吸収・代謝によって発生します。

しかし、外部が冷えてくることによって、結果的に体内外を出入りできず、体内に余分に閉じ込められると「鬱熱」或いは「内熱」が生じます。

例え:どういうこと?


釜戸や土鍋でお米を炊くことを想像してみましょう。※あくまでイメージです

お米=食事全般と読み替えてください。

 

 

 

 

 

お米を炊くと、

まずは、水を吸ったお米は熱せされ、膨張します。

加熱を続けると、米の表面に糊のように粘り気がでて、お米が柔らくなります。

沸騰状態を十分に保つとで、米を完全に炊き上げ、残った水と熱が蒸発し、発散されます。

適度な水の量と加熱加減にすれば、陽気がたっぷり含んだ美味しいご飯は炊き上がり、

熱も十分に蒸気します。そして秋と冬に健やかに過ごせます。

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しかし、例えば、蒸気口が詰まって塞がることや、途中に冷水を入れてしまえば、生じた熱が昇発せず内部に閉じ込める(内熱)ことや、余分な水が蒸発せず停滞してしまいます(水湿)。

加熱し続けると粘り気の強いドロっとしたもの(痰)に変わり、土鍋の器も弱ってヒビは入ってしまうか、生じた“湿・痰”の炊きこぼれが発症します。

人体への置き換え

  • 冷房をかけすぎることや、解熱剤を服用すると発汗などの熱を発散するメカニズムが働かず、蒸気口が塞ぐと同じ様な現象で、体という器に「内熱」がこもります。
  • 途中に冷水を入れてしまう:冷飲やアイスを摂しすぎると、脾の気を弱らせてしまい、“米”を完全に炊き上げず、お粥状のような、「内湿・寒湿」が体内に停滞します。また、あるいは、元々の「内熱」をさらに体内の奥へ追いやってしまい、この”熱”が蕁麻疹や場合によって重篤な疾患につながることもあります(*これは一番怖いです)
  • 加熱しつづける=こもった熱や飲食の不摂が長期につづくと、いわば、「湿」が「熱」でさらに蒸らされると、「湿熱や痰湿」に変わります。※粘り気の強いもの

すると、胃腸など、臓腑の働きが悪くなり、関節などへ「湿」が蓄積すると、痛みや拘縮が生じます。
それとも

「痰湿」が「熱」とともに衝き上げると、“炊きこぼれる”のように、炎症、目ヤニ、頭痛、皮疹など、お体の上部に色々な症状が生じやすくなります。

さ、「やってしまった!」
「秋にどう過ごせば取り戻せますか?」

 

秋の相応しい過ごし方

古代中国の医学書『黄帝内経・素問』の篇の1つである「『四気調神大論』(しきちょうしんたいろん)には、

“秋に“精神を引き締めて、平安を保つ。気持ちを外に向ける活発な行動は、やり過ぎないようにして、肺気を清涼に保つ“

と書かれています。

が…

冬でもアイスや夏野菜、夏に温性の食材、

冷房した密閉室に暑さをしのぐ、
電気や暖房があって夜遅く起きて働く、現代の生活ですから…

まずは、秋と冬になっても余分の陽気(熱)を十分に発散することが大切です。

  • 体が温まる程度の軽い運動して、適度に汗をかくこと(激しい運動しないように注意)、
  • 痰を生じる飲食物(肉、油物、甘いもの、クリーム、チーズなどの乳製品)を控えること、
  • 日常生活の中で自然に触れ、気分転換を心がけること

…をしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

余談:

北モロッコに旅をしていた時、お店や人の家を訪れると、いつも温かいミント茶を出されました。気温が高く、冷房のある部屋が少なかったのに、現地の人は皆、温かいものを口にします。
私がその理由を尋ねて、「外が暑いときに冷たいものを飲むと体温と外気温の差が大きくなり、余計に暑く感じる」と説明されました。

考えてみれば、ミント葉というものは“清熱”の作用をもちます。

即ち、体内を温めながらも(即ち、外の熱刺激を耐える力を与える)余分の“熱”を取り除きます。

“冷やす”と“清熱”の違いがポイントですね。