「我々の本分」解説のラストとなります。

「我々の本分」では

「喉が渇いてから井戸を掘るようなことや、戦闘が始まってから慌てて兵器を作るようなことでは手遅れであり、そもそも我々の最も重要な果たすべき本分は何か?について『素問』第2篇ですでに学んだ通りである。」

と、このように述べました。『素問』第2篇・四気調神大論 引用の原文は、

「夫病已成而後藥之.亂已成而後治之.譬猶渇而穿井.鬪而鑄錐.不亦晩乎.」

さらに、このセンテンスの前にこのようにあります。

「是故聖人不治已病.治未病.」

*道理に通じた人は、すでに病んでいるものを治療するのではなく、まだ病になっていない状態においてバランスをとる治療をするのである。(意訳・新風)

今般の新型コロナウィルスに感染して重症化する方の多くは、高齢者や基礎疾患のある方、ということです。

すなわち、正気が衰えていたり、普段から正気と邪気が拮抗している状態(基礎疾患がある)にあって、外邪としてのウィルスに十分対応できるだけの正気のゆとりがない、という風に解することができましょう。

であるならば、生体の陰陽を平衡ならしめ、正気が常に発動できるよう、鍼灸という手法を用い、患者さんに適切な養生法をお伝えする、ということが我々鍼灸臨床家の本分であると考えるのです。

最後になりましたが、

「恬憺虚無.眞氣從之.精神内守.病安從來.」『素問』上古天真論(01)

さまざま情報から得るものがありますが、ブレないことが大切です。